2020/02/09 10:00 448PV

副業の代わりに企業内部活動?企業内部活動の意義や価値についてコミュニティデザイナーはこう語る

黒田 悠介

働き方改革が叫ばれ、大手企業の中でも副業解禁の流れが起きています。また、生産性向上の為、労働時間を削減する動きも多くあります。

反面、フリーランスの人口が減少していると言う統計結果もあり(後述参照)、働く人々のニーズをハッキリと捉える事が難しくなっています。

このような動きの背景にあるものは何なのか、そして、企業の活動において部活動がどういった意味を持つのか。

コミュニティデザイナーの黒田さんにお聞きしました。

黒田 悠介(くろだ ゆうすけ)

「議論で新結合を生み出す」という活動ビジョンを掲げて、新しい職業とコミュニティを生み出す活動を行う。

「職業×議論」としてはディスカッションパートナーを生業に。スタートアップから大企業の新規事業まで、主に1on1の議論を通じて立ち上げを支援。

「コミュニティ×議論」としては議論というフラットでポジティブな対話でつながるコミュニティである『議論メシ』を主催。お互いの意見や価値観を尊重しながら、新しいアイデアやモノの見方を一緒に作り上げる実験場として、議論をとおしてメンバー同士が自然とつながり、様々なコラボレーションを生み出す。

他に、フリーランスコミュニティ「FreelanceNow」の発起人でもあり、かつては「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営するなど、「フリーランス研究家」として働き方の多様性を高めるための活動も行う。

東京大学文学部心理学→ベンチャー社員×2→起業(売却)→キャリアカウンセラー→フリーランス研究家→ディスカッションパートナー→コミュニティデザイナーという紆余曲折なジャングルジム型のキャリア。

黒田 悠介

企業はチームでありコミュニティである

黒田:まずお伝えしたいのは、チームとコミュニティの違いです?

赤木:一見すると同じように思えますね。

黒田:例えば『サッカーチーム』と言うとイメージしやすいですが、『サッカーコミュニティ』と言うとちょっとピンとこなくないですか?

赤木:確かに、サッカーチームとサッカーコミュニティでは目的も違うように思えますね。

黒田:仰る通りで、チームというのは外に目的のある人達の集まりで、コミュニティは中に目的のある人の集まりになります。サッカーチームであれば相手チームに勝つ事、大会で優勝する事といった目的になります。サッカーコミュニティであればその地域での活動や、コミュニティで集まる事自体を楽しみにしている人の集まりというイメージですね。

赤木:なるほど、サッカーコミュニティというとあんまり強そうってイメージはないかもです 笑

黒田:では企業はどうでしょう?

赤木:そういう意味でいうとチームですよね。競合他社に勝ったり、売り上げ目標を達成したりと他者を前提とした目的で集まっていますから。

黒田:そうですね。やはりチームとしての色合いが強く出てきます。その場合、チームの構成員である社員はチームの目的を果たす為の役割を担う形になります。ですが、企業の中でもコミュニティ的な要素はあります。と言うより、チームとしての企業、コミュニティとしての企業と両面がある。

赤木:コミュニティとしての面というと、どういったところでしょう?

黒田:例えばスポタスさんでは『BUKATSUP(ブカツアップ)』という企業内部活動の支援サービスをされていますが、まさに企業内部活動は企業におけるコミュニティの面だと思います。一部の実業団は別として、企業内部活動の結果で本人の評価が変わるなんてありえないですよね?あくまで社員同士が交流する事を目的にしているので、そういう意味ではコミュニティにあたります。

赤木:なるほど。企業内部活動を企業におけるコミュニティと考えるのは面白いですね。

黒田:そして次に大事な事として、チームとコミュニティでは所属員の持つ価値が変わります。

赤木:どういう事ですか?

黒田:チームの目的が外にあり、勝つ事や売り上げといった定量的なものである以上、組織構成員の価値はそこに繋がるものになります。これを『Doの価値』と呼んでいます。

赤木:例えば営業力だったりその人だけのスキルだったりですね。

黒田:そうです。ですが、コミュニティの目的はあくまで内側にあるので、そこで求められるのは定性的な価値になります。これは『Beの価値』と考えると良いでしょう。

赤木:成果や能力ではなく、個人としての存在が価値になるという事ですね。最近だと『心理的安全性が重要』といった話もありますが、そういった考えとも近そうですね。

黒田:企業活動ではどうしてもDoの価値にフォーカスが当たりますが、これからの企業においてはBeの価値を認める風土が必要になります。その場として企業内部活動を使うというのはとても合っていると思いますね。

釣りバカ日誌のハマちゃんスーさん

赤木:Doの価値とBeの価値で思い出したんですが、例えば漫画の『釣りバカ日誌』。主人公のハマちゃんは仕事ができないペケ社員だけど、釣りのフィールドでは社長であるスーさんの師匠になるんですよね。あれなんかまさにDoの価値とBeの価値じゃないですか?

黒田:その例えは分かりやすいですね。Doの面で評価されない人がBeの面で評価される事はありますし、お互いの立ち位置が逆転するというような現象も起こり得ます。そして、組織においてもそういった関係性の再構築は重要になります。組織は役割が固定化されてしまうと硬直してしまうので、ある場面において関係性が再構築される事で組織自体がストレッチされて柔軟になります。

赤木:企業全体としてもプラスになりそうですね。

黒田:企業におけるコミュニティの機能として、そういった関係性を再構築する事で離職率を低下させたりロイヤリティを高める効果は有るでしょうね。社員としても、仕事の評価と別軸で会社と繋がる事ができますから。

赤木:逆に仕事で活躍してる人にとっては困るかもしれないですが 笑

黒田:意外とそうでもないですよ。これは社会学的な話にもなりますが、仕事ができるできないに関わらず、会社では『ロール』(役割)としての自分として他の人と接していませんか?

赤木:例えば『〇〇チームのリーダーとしての自分』みたいなイメージですか?

黒田:そうです。社内の人と関わる時、私達は無意識に自分の存在を役割として定義しているんです。でも私達はロールだけじゃなく、パーソナリティを持って生活しています。ロールとしての自分が高く評価されていても、パーソナリティとしての自分を受け入れてもらいたいという願望は誰しももっているはずですよ。

副業のオルタナティブ(代案)としての企業内部活動

黒田:副業解禁の流れが出ていますが、実は一方でフリーランスの人口って統計上は減ってるんですよ。

赤木:そうなんですか!?

黒田:ランサーズ株式会社の『フリーランス実態調査』の2018年版と2019年版を比較すると、2018年時点でのフリーランスの人口は1119万人いたんですが、2019年には1087万人になっているんです。

(参照:https://www.lancers.co.jp/news/pr/14679/ https://speakerdeck.com/lancers_pr/huriransushi-tai-diao-cha-2019nian-du-ban

赤木:意外です。社会的にフリーランスのニーズが減っているという事ですか?

黒田:そうではないと思います。この統計はあくまでも有償で働くフリーランスのものですので、実態としては、有償フリーランス以外の活動に広がっているのではないかと思います。例えばボランティアや地域活動なんかもそうですね。

赤木:なるほど、有償フリーランス以外の選択肢が見えて来た結果なんですね。

黒田:そして、そういった方のニーズは必ずしもお金を稼ぎたいというものではなく、社会における自分の居場所を作りたいというものもあり得ます。これは具体的な情報ソースがある訳ではないですが、コミュニティに関わることを生業にしているとそういうニーズがある事は体感しますね。

赤木:そういった居場所を求めるニーズがあるのであれば、企業としては副業先を紹介する代わりに部活動を紹介するという提案もできそうですね。

黒田:本質的に求めているものが居場所であるなら可能だと思います。企業にとっても副業解禁は労務管理上のリスクがありますし、離職率が高まるリスクもあります。企業内部活動であれば、活動そのものを企業活動に紐づける事ができますし、社員の帰属意識を高めたり離職率を防止したりという効果が見込めます。部活動もスポーツに限らず、例えばエンジニアの技術勉強会を部活動と考えるなら自己啓発やスキルアップといった効果も見込めます。

赤木:「副業の代案として企業内部活動を推進する」と言うとピンとこないかもしれませんが、こうやって解説されると納得できますね。

黒田:最近では企業が社員の副業先を紹介してくれるような事例もありますが、社員に部活動という『時間の使い方』を提案するのもアリだと思います。副業だと労務管理上の課題がありますが、部活動であればそういった部分もクリアできるはずですし。

赤木:企業としては副業を推進して副業先に転職されてしまうリスクも下げられますし、そういった面でも経営上のメリットはありそうですね。

コミュニティとしての企業内部活動を立ち上げ、維持するポイント

赤木:『BUKATSUP』をリリースしてから色んな引き合いを頂くんですが、「どうやって企業内部活動を作って盛り上げたらいいか分からない」と言った声を多く聞きます。そういう企業内部活動のコツみたいなのってありますか?

黒田:コミュニティ運営という面で言うと、『枠から始めるか核から始めるか』が大きなポイントですね。枠から始めるというのは、『〇〇部を作ったから誰か入って~』会社が呼びかける事で、核から始めるというのは『〇〇部を作りたい』という気持ちを持っている人を数人見つけておいて、その人達をコアの部員としてアサインする事です。うまくいくコミュニティは必ず後者です。

雪だるまをイメージすると分かりやすいですが、核になる小さい雪玉を思い切り固めて転がすと後は自然に大きくなっていきますよね?

赤木:なるほど。

黒田:最初は4人くらいで良いと思います。その人達が楽しそうにしている姿を見せると、自然と周りに人が集まります。特に若手の少人数組織が良いですね。上役の方が中心になってしまうと、どうしても会社のモードが強くなってしまい、周りもお付き合いで付いてくるようになってしまいます。

赤木:先に仰っていた組織ストレッチの上でも大事ですね。

黒田:後はその活動を上の人が褒めたり社内広報してくれると良いですね。褒めると言っても別に人事評価的な意味ではなく、アンオフィシャルな承認です。そうしていくと文化として根付きやすいです。これは部活動に限らないんですが、新しい取り組みをしようとする上で経営層がコミットしていく事が鍵になります。いかに経営層が部活動をコミットするかによって成否が変わります。

赤木:よくある質問として「部活動申請のフォーマットや経費精算の方法を教えて欲しい」などもありますが、経営層のコミットの方が重要度は高そうですね。

黒田:そういったバックオフィス側のHow toも確かに大事ですが、コミュニティの観点で言うとやはり社内部活動をどう位置付けるかの方が重要ですね。

赤木:そういった熱量ある人達で部活動が立ち上がったあと、維持し続ける為に必要なものってありますか?

黒田:部活動の場合、次の活動まで時間が空いてしまいます。その間を埋める橋渡しの仕組みが必要ですね。例えば飲み会だったり反省会だったり、写真を撮ってオンラインで公開するのも良いです。

赤木:例えば定期的に大会に出場するような、ガチガチじゃない程度の目標を設定するのも良さそうですね。

一億総居場所無し時代

赤木:こういった個人が居場所を外部に求める動きって最近よく聞くように思えるんですが、その背景にあるものって何だと思いますか?

黒田:総論として、『コミュニティの弱体化』にあると思います。

赤木:コミュニティの弱体化ですか?

黒田:例えば昔であればお寺があって檀家さんがいて、そこは個人が永続的に所属できるコミュニティとして機能していました。他にも村という共同体があったり、都会でも家族経営の会社や終身雇用の企業など、Beの価値を承認してくれる場所がありました。

赤木:確かに、私も子どもの頃はそういったコミュニティを色んなところで見かけました。

黒田:現代においては、そういったコミュニティが弱体化していると言えます。お寺の集まりに行く人は減っていますし、家族経営の会社や終身雇用の企業も減少傾向にあります。そうすると、Beの価値を認めてくれる場が無くなってしまう。

赤木:皆がゆるやかに居場所を失ってきたんですね。

黒田:要因は様々だと思いますが、ある種『一億総居場所無し時代』みたいな状態ですね。

赤木:分かりやすい 笑 そこで皆が無意識に居場所を求めているんですね。

黒田:例えばオンラインサロンやゲーム・アニメのファンコミュニティなどもそういった居場所探しのニーズに応えているものだと思います。

赤木:確かに、そういう意味では『価値観』がコミュニティの核になっているのかもしれないですね。

黒田:そうですね。地縁や血縁でもなく、同じ価値観で繋がっているコミュニティです。そこでは価値観そのものがBeの価値になり、お互いのパーソナリティを承認しあう機能を果たしているんだと思います。これは企業の部活動でも言える事で、その競技が好きという価値で集まっていたり、活動自体に価値を置いている人達によるコミュニティとも言えますね。

今こそ企業内部活動を

赤木:色々お話をお聞きしていると、企業内部活動をする意義が見えてきたように思えます。

黒田:そうですね。企業内部活動を企業や社会におけるコミュニティとして再定義すると、その必要性が見えてくると思います。

赤木:個人がBeの価値を認めてくれる場を求めているとするなら、企業内部活動が持つ価値は大きいですね。

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文:赤木 勇太
この記事の記者紹介
スポタス編集部

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