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Jリーグを目指さないサッカークラブ。サッカーの無限の可能性を広げ、価値を伝えていきたい。FC.BANDELIE(バンデリエ)の挑戦【スポタス人】

インタビュー

スポタス人とは

スポーツだけではなく、プラスアルファの形でスポーツと関わるキラキラした人物。

スポタスでは、『スポタス人』のインタビューを通じてスポーツとの様々な関わり方を発信しています。

スポタス人紹介

岸 幸太郎

1990年 大宮生

幼少期よりサッカーを始める。中学時には高円宮杯U-15サッカーリーグ・Jユースカップ全国優勝。高校時には高円宮杯U-18サッカーリーグ全国優勝を果たす。

その後、東京学芸大学に進学し、教員免許取得に向けて勉学に努めながら、蹴球部では部の副主将・ゲームキャプテンも担い、組織運営を経験する。

現在は社会人として働きながら、自身で創設した社会人サッカークラブ『FC.BANDELIE』のクラブ運営を行う。

インタビュー

サッカーを始めたきっかけ

赤木:まずはサッカーを始めたきっかけからお話頂いてよろしいでしょうか。

岸さん:サッカーを始めたのは4歳頃です。当時は幼稚園の年中で、近所のお兄さん達が公園でサッカーしているのに混ざったのがきっかけです。大宮に住んでいたのですが、浦和から近いということもあり、比較的サッカーが盛んな地域でした。

赤木:サッカーが盛んな地域だと、幼少期からサッカーに触れる事が多いですよね。

岸さん:そうですね。そこから幼稚園のサッカークラブに入り、小学校では地元のサッカー少年団に入団しました。幼稚園の頃はプロサッカー選手とかを目指していたわけではなかったのですが、近所のお兄さん達と一緒にプレーしていたことで同年代よりは運動神経も良かったかもしれません(笑)

そういったこともあり、小学校ではキャプテンなどを任されたり、チームの中心選手として、トレセンに選ばれたりもしました。それが小学4年生の頃ですね。そのあたりから本格的にプロを意識し始め、平日には別のスクールに通ったりもしていました。

▲幼少期時代の活躍の一枚

赤木:そしたら練習はどれくらいの頻度でされていたんですか?

岸さん:小学校低学年までは土日だけでしたが、中学年あたりから平日はクーバーコーチングのサッカースクールに入り、週4~5日の頻度で練習をしていました。平日練習のおかげもあり、トレセンに選ばれたり、小学生の一番大きな大会で少年団の歴史上でも上位に入るくらいの結果を残せたりしたと思います。

中学・高校時代の活躍

赤木:めちゃくちゃエリート少年だったんですね!小学校を卒業した後はどうされたんですか?

岸さん:いや、そんなことないですよ!卒業した後は、浦和レッズの下部組織である浦和レッズジュニアユースに入りました。

赤木:入るのは難しいんですか?試験とかあるのでしょうか?

岸さん:小学校6年生の時に試験があるんですが、大体500~600名が参加します。その中から20名弱が選ばれる形となります。

同期には、現在プロサッカー選手として活躍している山田直輝選手、高橋峻希選手、永田拓也選手などもいました。

赤木:中学・高校での結果や成績を教えてください。

岸さん:中学3年生時に夏・冬と全国優勝し、高校3年生の時にも、最後の大会(高円宮杯)で日本一になったことです。

▲中学時代、高円宮杯U-15サッカーリーグ・Jユースカップ日本選手権優勝!

 

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▲高校時代のTOPチームとの練習試合風景。高円宮杯U-18サッカーリーグでは全国優勝を果たす。

怪我に悩まされる時期

赤木:そしたら順風満帆な青春時代だったんですね!

岸さん:いえ、中学3年生の日本一になった大会の予選で怪我をしてしまい、そこから怪我を繰り返していく生活になりました。

赤木:怪我の箇所はどこだったんですか?

岸さん:そのときは足の甲にヒビが入ってしまい、そのあとは腰を痛めたり、股関節を痛めたりと、怪我には長い間悩まされましたね。

赤木:ちなみに今は完治されたんですか?

岸さん:今はもう大丈夫なんですが、その時期に怪我をしたことでまわりとの差が少しずつ離れていきました。怪我を言い訳にして、本来できる事もできないと思い込むようになってしまったり、逆に治り切っていないのに試合に出場してしまったり、色々ともがいていた時期でした。

プロを諦めるまで

赤木:それは大変でしたね。 高校卒業後はプロになれず、どうしたんですか?

岸さん:大学サッカーに進み、4年間プロサッカー選手を目指して再出発しました。ただ、結果的には、プロにはなれず、部活の引退と同時にプロサッカー選手を諦めました。

赤木:プロサッカー選手を諦めたときはショックだったんじゃないですか?

岸さん:それほどショックでは無かったです。高校最後の大会で決勝だけメンバーに入れなかったことがすごく悔しくて、大学サッカーでは、必ず試合に出て自分の力をピッチで表現したいと思っていましたので。やれることはやっての結果だったので現実を受け止められました。

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▲大学4年生時には部の副主将・ゲームキャプテンとして活躍

卒業と『アローレはちきたFC』のチーム運営

赤木:大学卒業後はどういった進路に進まれていたかお伺いしてもよろしいですか?

岸さん:文部科学省のプロジェクトメンバー(派遣アスリート)として、小学校や地域のスポーツクラブに派遣されていました。スポーツクラブは「はちきたSC」という名前ですが、そこにあるサッカーチーム「アローレはちきたFC(現:アローレ八王子)」のチーム運営にも携わりました。

なので小学校では体育の授業を担当したり、体育の苦手な先生にアドバイスをしたり、アローレではクラブ運営をしたり、サッカースクールのコーチなどもしていました。

赤木:派遣アスリートという立ち位置でクラブ運営までするって、かなり大変だったんじゃないですか?

岸さん:確かにハードでした。でも大学で学んだ教員もできて、自分の好きなサッカーをすることも、教えることも、支えることも経験できたのでとても充実していました。

それにNPO法人として地域密着のクラブ運営をしていたため、仲間と地域の人を巻き込めれば、チャレンジしたい事をチャレンジさせてくれる環境だったのですごく貴重な経験でした。そういったこともあり、サッカーのチーム運営から、クラブ経営で学ばせてもらうことができたと思います。

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▲はちきたSCでは、チーム運営、コーチ、選手として活躍

 

赤木:具体的な取り組みなどお聞きしても良いですか?

岸さん:私がクラブに入った時のサッカーチームは、リーグの中で下から3番目くらいで、練習に参加する人数も3人だったり、ひどい時は1人しかいなかったりしていました。

それでもJリーグを目指すと掲げていたので、どうにかしなければいけないということで、選手への関わり方、SNS活用、練習の見直し、選手の補強、セレクションの導入、監督の招聘など新しい取り組みをたくさん仕掛けていきました。

赤木:改革を行ったんですね。それで結果はどうでした?

岸さん:2年在籍していたんですが、降格争いをするチームから、昇格争いができるチームまで成長しました。

赤木:その経験は大きな財産ですよね。

スポーツクラブの立ち上げ

赤木:その後もサッカーに関わってお仕事をされてきたんですか?

岸さん:はい。地元に戻って、総合型地域スポーツクラブを立ち上げました。

赤木:総合型地域スポーツクラブ?

岸さん:地元で育った人や、その地域に住んでいる人達がスポーツや文化活動で集まれる場という立ち位置の地域に密着したスポーツクラブです。はちきたSCが総合型でしたので、自分も地元に総合型のスポーツクラブを創りたいと思って始めました。

赤木:規模は大体どれくらいだったんですか?

岸さん:2年で100名くらいまで集まりました。年齢層は3歳~80歳と幅広かったですね。

FC.BANDELIEの設立

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▲仲間達との1枚

 

赤木:FC.BANDELIEについては、いつくらいに設立されたんですか?

岸さん:スポーツクラブを立ち上げて2年目ですね。2016年の1月です。サッカースクールの子どもたちにとって、将来の憧れとなるようなチームを創りたくて設立しました。

赤木:FC.BANDELIEは社会人クラブですよね?

岸さん:社会人メインですが、今は大学生もいます。それと、子どもとの関りも少しずつ増えてきていて、普及活動の一環として、葛飾区の子どもたち中心にサッカーを教えたりもしています。将来的には育成チームも創りたいと思っていますし、シニア層のチームも創りたいと思っています。

赤木:幅広い年齢層に展開していく事を視野に入れているんですね。

岸さん:そうですね。私の理想としては、子どもから年輩の方まで、サッカーを通じて様々な人が繋がるようなコミュニティを作りたいと思っています。

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▲クラブ代表兼選手として活躍

拠点を持たないサッカークラブ

岸さん:実はFC.BANDELIEは特定の拠点がまだ決まっていません。

赤木:そうなんですか?

岸さん:正直、無いなら無いでそれもアリかなと思っています。特定の地域だけを巻き込むなら拠点が合った方が勿論良いんですが、地域を特定してしまうと他の地域の方々との関りも薄くなってしまい、できることも限られてしまうのではないかなと考えています。

案外、特定の地域を拠点にしない方がより多くの方々と関わることができ、沢山のファンもついて下さるんじゃないかなと思っています。その分大変ではありますが、Jリーグ参入を目指さないクラブだからこそできることだと思いますね。

FC.BANDELIEの目的

赤木:先ほどお聞きした話と重なるんですが、FC.BANDELIEのチームとしての目標をお伺いしても良いですか?

岸さん:現在の目標は1部昇格です!ただ、それは手段の一つでしかないです。

FC.BANDELIEの目的は「サッカーから新たな価値発見の機会を創出し、より充実したライフスタイルに貢献する」ということです。つまり、より多くの方々の生活に貢献できるようなクラブとなり、「サッカーの可能性を広げ、価値を伝えていく」ということです。

価値を伝えていくための手段として、強くする・広報する・触れ合うなどを意識して活動しています。サッカーである程度強くならないと、興味すら持ってもらえないと思いますしね(笑)。

赤木:岸さんの考えるサッカーの価値ってどういった所にあると思われますか?

岸さん:人を成長させ、人と人を繋げられる無限の可能性を秘めているところです。

私はサッカーで育てられた人間です。サッカーがあるからこそ、様々な考え方、生き方、人と繋がりを形成してきました。

サッカーは人を育てる事も、繋げることもできるスポーツだと思っていますし、それがサッカーの価値だとも思っています。

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赤木:その価値を伝える相手は地域の人達になるんでしょうか。

岸さん:地域の人というより、自分たちと関わりのある方々になりますね。正直、『日本サッカー界を変える!』というよりは、身近な人達の考え方や在り方を変えたいと思っています。

今の子どもたちは目標がYoutuberだったりプログラマーだったり、クリエイター寄りな印象を受けます。それが悪いという訳ではないですが、少なからず社会的なサッカーの立ち位置が低くなり、それに伴う親の判断軸、子どもにさせる習い事も変化してきていると思っています。それは教員をしていたときにすごく感じました。

赤木:そのような状況にはなぜなってしまったのでしょうか?

岸さん:その要因の1つとしては、よく言われているアスリートのセカンドキャリアが明確に打ち出せていないという状況もあると思っています。

サッカー選手になったとしてもセカンドキャリアで苦しむ、プロを目指してもなれなくて就職に悩んでいるなどです。

だからこそ、プロになっても、なれなかったとしても、最終的に社会人として活躍していて、それがサッカーのおかげと皆が胸を張っていえる社会をつくっていく必要があると考えています。

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▲ファンの方と一緒にBBQイベントを開催する事も

今の選手達に足りないもの

赤木:岸さんから見て、今の現役選手に「もっとこうしたら良いのに」と思う事って有りますか?

岸さん:選手として食べていけなくなった時のことは、プロになった時から常に意識しておいた方が良いと思います。もちろん現役中は、活躍をして日本代表や海外などを視野に入れて頑張らなければいけないとう考えもあると思います。

ただ、世の中も変わってきて兼業や副業、パラレルキャリアやデュアルキャリアという言葉が広がってきているように、いかに現役中から次の事を考えながら活動していくかが重要だと考えます。プロとして生涯年収以上を圧倒的に稼げれば最高ですが、それがダメだった時にどうするかを考える事が大事ですね。仕事でいうリスクヘッジです。

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赤木:その辺り、なかなか難しいところですね。現役でいる間からダメだった事を考えると言うのは、気持ちで負けてしまうような感じになってしまいそうで。

岸さん:リスクヘッジに対してなかなか腑に落ちない部分は有るでしょうね。例えば複業を考えるにしても、どうしても今の価値観だと選手と商売をかけもちする事は非難されがちだと思いますし、だったら体のケアやトレーニングに費やせというファンもでてくるでしょう。

赤木:そんな現状をFC.BANDELIEとしてどのように解決していきますか?

岸さん:直接的な変化を促すのではなく、間接的に変化を増やしていくことで解決できると考えています。

サッカーをしていたことが社会での活躍に活かされている人や、逆に今悩んでいる人のサポートをしてくことで数年後に活躍できていたり、FC.BANDELIEがたくさんの方々のハブとなっていき、プロがゴールではない、サッカーがあったから今がある、という人がいるということを世の中に伝えていきたいです。

また、現役選手とビジネスを繋ぐような動きができても面白いと思います。FC.BANDELIEはサッカーチームではありますが、沢山の方々のハブとなり、活躍の後押しや課題の解決ができるクラブになっていきたいと思います。

そしてサッカーの無限の可能性を広げ、価値を伝えていきたいと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、『サッカーの価値を伝える』と言う事を軸に、サッカーを通じての人としての成長やアスリートのキャリア形成など多岐に渡ってお話頂きました。

スポタスでは『スポーツ+何か』を持ったスポタス人をこれからもご紹介していきます。

この記事の記者紹介
スポタス編集部

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早川:いえ、私が入学した当時はスポーツ心理学専攻ではなく、理学部の情報物理学科でした。 赤木:むしろ心理とは離れた印象ですね。 早川:きっかけは、当時のスポーツ心理学の実践している先生で第一人者の人がいて、その方の主催するメンタルトレーニング勉強会にいったことです。目から鱗が落ちるような内容で、そこからもっとスポーツ心理学について勉強したいと考えるようになりました。 赤木:大学にいるとたまにびっくりするような面白い授業に出会える時ってありますよね。 早川:その先生がメンタルトレーニングのスタッフ募集していて、学部は違うけどやりたいと思って先生の研究室に入り浸り、勉強会に参加して4年間を過ごしました。 赤木:熱量が凄いですね。 早川:学部生が終わって修士になった時、その先生の研究室に入る為に体育学科に入ります。そしてそこで2年間本格的にスポーツ心理学の勉強を始めました。 アメリカ留学 赤木:今はアメリカの大学にいらっしゃいますが、元々アメリカの大学に行こうと考えていたんですか? 早川:英語には元々興味がありました。中学の時にも英会話教室に3年間通っていましたし、漠然と、英語をもっと使いたいとは思っていました。留学の大きな理由としては、大学院1年生の時に進路を考えてて、当時通ってた大学に博士課程がなかったので外に出る必要がありました。それで先生や研究室の先輩に進路相談した時、留学を勧められたのがきっかけです。 赤木:それでアメリカ留学だったんですね。かなり勇気が必要だったんじゃないですか? 早川:学生でスポーツ心理学を学びに留学してた人はいなかったので、腹くくっていきましたね。それでまずはフロリダに行って、その後今いるテネシーに行きました。 スポーツ心理学がマーケットとして成熟していない状況ですので、自分が先陣きって後輩の目指す道をつくっていきたいという想いでしたね。 赤木:テネシー大学を選んだ特別な理由は何かあったんですか? 早川:国際応用スポーツ心理学会が年に1度あるんですが、そこで留学の情報を集めていたところ、テネシー大学の運動学博士課程を見つけました。そのプログラムが東海大学のプログラムに似ていて、研究よりも現場の選手に直接アプローチする形でした。そこに魅力を感じてテネシー大学を選びました。 その後、英語学校に2年間通い、修士としてスポーツ心理学、運動学士を2年経験して、博士課程では教育心理学や色んな学習理論、指導理論を4年間学びました。その間、不定期でアスリートのメンタルサポートも行っていきました。 ▲ポートランドで開催された国際応用スポーツ心理学会にて自身の研究をポスター発表。 アメリカのスポーツ心理学 赤木:アスリートのメンタルサポートはどういった事をされていましたか? 早川:剣道のユース選抜チーム向けに練習会の様子を見てアドバイスをしたり、セミナーやワークショップを開催したりしていました。日本でも一時帰国のタイミングでセミナーに登壇したりもしていましたね。 スポーツ心理学に関する世界の関心 赤木:アメリカなどではスポーツ心理学がかなり盛んだと聞いていますが、やはりそういった点は体感されますか? 早川:そうですね。まずスポーツのスケール感が全く違っていますね。それは建物や施設、マーケットについても言えます。そしてスポーツに対する裾野の形が違っています。 赤木:裾野ですか? 早川:アメリカでは誰でも気軽にスポーツができる環境があるんですが、本格的にやりたいと思ったら学校ではなく地域のクラブチームに入ることになります。日本のように放課後に部活動があったり、学校単位でどこかに遠征するというものはないです。 赤木:学校以外の場所にもスポーツができる場所が沢山あるんですね。 早川:例えばテニスコートやゴルフ場は凄く安いですし、色んな所にジムがあったり、バスケコートも多くあります。メジャースポーツについてはどの競技も気軽にできますね。 赤木:日本だとメジャースポーツは特に競技する場所に困ったりしますが、そういった困り事が無いのは羨ましいですね。 早川:プロスポーツに対する投資もアメリカは大きいですね。特にトップにいけばいくほど投資金額は大きくなっていきます。それはスポーツサイエンスに対しても同じで、トップにいくほど科学的な分野への投資がなされますね。 赤木:やはりトップチームではメンタル面のサポートも手厚いですか? 早川:そうですね。どのチームも専属のメンタルコンサルタントがつくようになります。例えば野球ならマイナーリーグでも全球団にメンタルコーチがいますし、スポーツ心理について理解はありますね。とはいえそれもトップレベルに限られていて、草野球のレベルで言うと日本と大差はないと思います。 赤木:アメリカでもまだメジャーな分野という訳ではないんですね。 早川:アメリカは規模が大きい分、スポーツ心理学を学べる大学は多いですが、まだまだスポーツ界の中ではマイナーな分野ではありますね。やはりフィジカルや生理学アスレチックトレーニングなどがメインになっていて、スポーツ心理学は修士課程や博士課程として取り組む人が多いです。その人達が現場に入っていく形でスポーツ心理学の認知が広がっているのが現状です。 成長の楽しさを味わってもらいたい 早川:スポーツ心理学のテーマとして、成長する楽しさを味わうということがあります。例えば競技中のプレッシャーを無くしたり、競技力を最大にするといったことで、特に私が興味を持っているのは後者の方です。 赤木:競技者が自分の持っているパフォーマンスを最大に発揮する点ですね。 早川:スポーツにおける様々な場面を目にしていて感じる事なのですが、指導者と選手の関係に行き違いがあると思っています。効果的なスポーツサイエンスのナレッジがない為に成長できていないという場面をよく見かけてきました。それは選手に限らず、指導者ももっとスポーツサイエンスを取り入れると成長する事ができるのにと感じる事も多いです。 赤木:確かに、指導者も過去の経験の範囲からしか指導ができないというのはありそうですね。 早川:今後はそういった部分にもアプローチしていきたいと思っています。以前、中学校の地域バスケチームに関わっていたんですが、その子たちのメンタルサポートをすると周りの指導者が驚くらいに成長した姿を目にしました。その時の喜びが忘れられなくて、選手たちが劇的に成長したり周りをあっと言わせたりする瞬間をつくりたいと思うようになりました。 日本のスポーツ教育 赤木:日本ではどうしてもスポーツやメンタルというと、根性を鍛えるといったニュアンスが連想されてしまいますね。 早川:日本の場合は、まず選手と指導者の関係を見直す必要があると思います。元々、日本のスポーツは体育が起源と言われています。体を育む為のカリキュラムですね。それがスポーツという面も持つようになってきたのが今の状況だと思います。 赤木:体育とスポーツでは必要な指導の在り方も変わってきそうですね。 早川:そうですね。体育では指導者と選手はそのまま上下関係になっています。それは年上を敬う考え方からもきています。ですが、近年では社会が変わって、文化が変わってきました。その為うまくいかなくなってきたことも多く出てきています。例えばパワハラ、体罰問題もそうですね。 赤木:元々そういった事はあったけど、選手の意識が変わったから表に出るようになったというのはありそうですね。 早川:そういった点で、指導者の意識を変えていく事が必要だと思います。これは何もパワハラや体罰に限らない話で、指導者側が良かれと思ってやっている事でも、選手サイドの声が加味されてないため選手の納得を得られない事などもあります。 赤木:正解と納得解みたいな話ですね。 早川:その判断にあるリスクを理解した上で、選手にも責任を持たせることが大事だと思います。やらされていない分、選手達も納得しますし。それがもし間違っていても、間違いから学ぶ機会を得たと考える事もできます。全て指導者が環境整備してしまうと、そういった間違いから学ぶ機会が無くなってしまいますので。 赤木:常に正解を選び続けるというのは難しいですからね。社会に出てからは特に。 早川:まずは指導者と選手の関係作りです。指導者は選手の声を聞き、選手の責任を認めてあげる。選手は自分で判断する事を与えてもらった代わりに責任を取る。そうやって、お互いを尊重し合う関係性を作っていく事ですね。そういった部分で、スポーツ心理学が役に立ちます。指導者と選手のコミュニケーションだったり、練習環境・指導環境のアイディアなどはスポーツ心理学が担える部分でもあります。 赤木:指導者と選手が一緒につくっていくのが大事なんですね。 早川:そうですね。ともに学びあって良い練習環境をつくる事が大切で、スポーツ心理学や教育心理学はそういった場を作るのに役立ちます。 学生と指導者にとってより良い関係を 赤木:今後の目標やビジョンについてお聞きしていいですか? 早川:学校内外での選手やコーチのサポートは引き続きやっていきたいですが、今後は大学に勤めて、学生選手に関わっていきたいと思っています。例えば授業や研究室で学生を育てて、スポーツ心理学を広めていきたいです。 他にはセミナーや勉強会を開いたりして、スポーツ心理学や教育心理学を広めていきたいですね。スポーツ心理学、教育心理学の価値をレガシーとして残していきたいと思っています。 赤木:学問をレガシーにして残すというのは面白い発想ですね。 早川:目指すのはスポーツ心理学のようなサイエンスの領域と経験を合わせる事で新しい価値を生むことです。私は経験論を否定しているわけではなく、サイエンスとの組み合わせで価値が出るものだと思っています。 赤木:確かに、机上論だけで進めようとするのは難しそうですね。 早川:例えば指導者が職人のように経験を積むことも大事だと思っていますが、経験だけに頼って指導すると選手によって成長したりしなかったりしてしまいます。サイエンスはより多くの人に当てはまる法則ですので、そこを補完する事ができます。 とはいえ、それはあくまでセオリーであって、例外的な特徴を持つ選手も出てきます。そういった選手については経験で補完していく。両方の良い部分を融合していく事で、より良い選手育成ができるようになります。 赤木:なるほど、お互いの不完全な部分を補完する形ですね。 早川:近年はサイエンスが軽視される風潮にありますので、それを同等に価値あるものとして捉えて頂き、多くの人達に活用していってもらいたいと思います。   文:赤木 勇太
2020/03/29 145PV

  • インタビュー

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  ──今だからこそ、家で手軽に運動を──     大型イベントの中止や外出自粛のムードが広まり、社会不安が高まっています。 そこでSPOTAS+では、スポーツに関わる人達の家トレ(家でできるトレーニング)を紹介し、少しでも皆さんが健やかに日々を過ごしていけるようお手伝いします。 今回ご紹介する方はこちらーーー   川上 陽子 さん  パーソナルトレーナー。 2014年から2016年にかけ、TIP.X TOKYO SHIBUYAにてトレーニング指導やパーソナルセッションを実施。2016年から2018年まで、岩手県沿岸部(大槌町・釜石市・大船渡市・陸前高田市)にて仮設住宅や災害公営住宅、地域の公民館、フィットネスジムなど、全50ヶ所以上で運動指導を行う。 現在はイマレ生活リハビリサポートセンターにて介護認定を受けた方々に運動指導や講義、移動・排泄介助をおこなう。 並行して、パーソナルトレーニングセッションの実施や岩手県釜石市における運動イベントの主催にも力を注いでいる。日常生活で無意識・意識的に選択している姿勢のとり方や身体の使い方、ライフスタイルを掘り下げながら、目的に合わせた身体づくりを包括的に指導する。解剖学や運動力学、神経生理学、心理学、栄養学、中医学などを学び、筋肉のみに特化しない、多角的なアプローチを実施。パーソナルトレーニングのご依頼はこちらから     自律神経のバランスを整える   川上 今回はカラダと心のスイッチを切り替えしやすくする種目をご紹介したいと思います。自律神経って聞いた事ありますよね? 内臓の働きを24時間365日休まずにコントロールしてくれている神経ですよね。 川上 はい、私たちは、いわば『戦闘モード』である交感神経と『休養・消化モード』の副交感神経のバランスを、必要に応じて整えていくことが大事になります。仕事やストレスフルな環境においては、交感神経を積極的に働かせることで乗り越えやすくなります。ですが、その際にガチガチになってしまった心身が、就寝時など本来リラックスしていいときにも緩まないことがあります。そうすると、睡眠の質の低下やカラダの冷え、浅い呼吸などにつながりやすくなります。 交感神経が働き続けてしまうことで様々なデメリットが出てしまうんですね。 川上 今回ご紹介する家トレは、心身の状態をリセットしやすくして、ストレスの軽減や睡眠の質の改善、仕事の効率の向上などポジティブな連鎖が期待できるものです。 ぜひ教えて頂きたいです! 身体をほぐして呼吸を整える   川上 いくつかありますので順にご説明しますね。まずは股関節まわりをゆるめます。下の2枚の写真のように足裏を合わせながら足をパタパタと上下に動かします。これはご自身が心地良いと思うスピードや動きの大きさでおこなってください。 一定のリズムは自律神経を整えることに有効です。「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、一定のリズムの動きの際に生成されやすいのです。 ▲足をパタパタと上下に動かして股関節をゆるめます。   一定のリズムでするのがポイントなんですね。 川上 次は下の写真のように、背中とお腹まわりをゆるめます。まず、足裏を合わせて手のひらを上に向けて足の下にくぐらせます。頭の重みに身を委ねながら首の力を抜き、口もぽかんと開けて全身を脱力させます。丸まった背中に新しい酸素を取り込み、背中が膨らんだししぼんだりするイメージで呼吸をしましょう。 ▲身体の力を抜いて丸くなる。   身体がほぐれていくのが分かりますね。 川上 次は下の写真のように、お腹まわりをゆるめていきます。手を重ねて、主に手の付け根をお腹に触れさせます。上に溜まっているものを下に流していくようなイメージで、強さはご自身が心地よい加減でおこないます。 ▲上に溜まっているものを下に流していくようなイメージで。   身体の中がキレイになってる感じがあります。 川上 ストレスや食生活などによる冷え、日常の姿勢などで、お腹は意外とかたくなっています。筋肉がかたいとその奥に入っている内臓もかたく、機能が落ちやすくなる。逆も然りで、外側からゆるめてあげることで、内臓にもアプローチすることができます。 内臓も整えることができるんですね! 川上 最後に呼吸に関係の深い部分です。下の写真のように、鎖骨近辺など胸まわりをゆるめます。胸まわりはストレスの影響を受けやすく、かたくなりやすい部分のひとつでもあります。鎖骨や肋骨の間は、筋肉で敷き詰められているので、骨と骨の間を指の腹でほぐしていくことが大事です。ご自身の手の温かみを伝えながらおこないましょう。胸まわりがほぐれることで、深い呼吸がおこないやすくなります ▲胸まわりがかたい状態では、深い呼吸をしようとしても胸まわりが広がりにくい。   なるほど、胸まわりの筋肉をほぐして呼吸がスムーズにできるようにする... 心地よさの追求が家トレ継続のコツ 家トレ継続のポイントについても教えて下さい。 川上 大事なのはご自身の声に耳を傾け、心地よさを追求していくことです。今までおこなっていないこと、ルーティンに含まれていないことを実践し、さらに継続することは簡単なことではありません。まずは実践し、それに対してご自身の心身がどのように変容しているのかを観察してみることです。 自分の心身の変化に意識を向けるんですね。 川上 意外と、普段ご自身のお身体に触れることは多くないと思います。例えば、お腹に触れてみて初めて冷えやかたさに気付いたりするものです。かたさや冷えが気になるところを重点的に温めることで、次第にお腹がゆるみ、深い呼吸につながっていきやすくなります。さらには今の状態に気付いたあと、「何でだろう…」と想いを巡らせてみて、「そういえば、最近暖かくなってきて冷たい飲み物を飲む機会が増えていたな」と思い返すかもしれません。 そういう変化を感じることができたら、冷たい飲み物を控えたり、お腹を温めるアイテムを使ったりするような具体的なアクションに繋がりそうですね。 川上 今ご自身のカラダや心がどのようなことを感じ、どのような状態に導いていきたいのか、そのために、何をしていくのか、一つひとつ丁寧におこなってみてください。カラダや心の心地よさを追求していれば、自然と結果的に「継続」が達成されているものです。 川上さんから読者の皆さんへ  お読みいただき、ありがとうございます!  このご時世の中で、ワークスタイルをはじめライフスタイルに変化が及んでいる方々も少なくないかもしれません。とくにこれまでと変わらない日々を過ごされている方々も、漠然とした閉塞感や不安感を抱いているかもしれません。  私も、今回の一件の影響を受けやすい立場の一人でもありますが、今の環境を最大限に活かしたいと思いながら日々過ごしています。例えば、在宅勤務の環境をより快適にするために、観葉植物を育ててみる。早起きしてカーテンと窓を開け、部屋をポジティブなエネルギーで満たしてしいく。仕事がキャンセルになった時間で読みたかった本を読んでみる。仕事の合間に散歩をして、春の訪れを感じる。これらは、今の状況に置かれたからこそ実現出来たことです。  そもそも、現代は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代と言われて久しいですが、それをあらためて思い出させてくれている機会であるように感じています。私たち自身の心身も、取り巻く環境も、常に変化し続けています。それらの揺らぎを受容しながら、個人や周囲の心地よさを追求し続けていくという積極的な姿勢が今、求められているのかもしれません。 制限されることが増えることで、ご自身が本当に大切にしたいことが見えやすくなることもあります。  ぜひ、一緒に心地よさを追求しながら日々を過ごしていきましょう!