2019/09/13 16:10 723PV

ベンチャースポーツ『パデル』とBBQを通じたコミュニティ創り。スポーツを通じた場づくりとは。【スポタス人インタビュー】

パデル

スポタス人とは

スポーツだけではなく、プラスアルファの形でスポーツと関わるキラキラした人物。

スポタスでは、『スポタス人』のインタビューを通じてスポーツとの様々な関わり方を発信しています。

パデルについて

今日はベンチャースポーツ『パデル』のスポタス人をご紹介します。

皆さんは『パデル』と言う競技をご存知でしょうか。

スペインで40年前に始まった、テニスとスカッシュを足したような、簡単に言うと壁に囲われた、ダブルスのみのテニスです。

今回は、パデルとBBQを組み合わせた『ガクパデ』と言うイベントを通じてコミュニティを運営している渡辺さんに取材をしてきました。

※パデルについてはこちらの動画を見ると分かりやすいです。スペインのトッププロのパデルはこのようにエキサイティングなプレーが繰り広げられますが、運動をあまりしていない初心者の方でもすぐに始められるのも魅力の一つです。

 

スポタス人紹介

インタビュー

渡辺 岳(わたなべ がく)

1980年東京生まれ新潟育ち。三姉妹の父。本名はたかしと読むが、呼びやすくて覚えやすいことから大学時代についたあだ名のガクを愛用。職場でも友達からもガクと呼ばれている。

中・高・大とテニスをプレーする。2016年にパデルに出会い、パデルとBBQをミックスさせたガクパデというイベントを企画運営している。

学生時代について

渡辺さん:大学ではテニスサークルに入っていたんですが、なんか違うと思って3年で辞めてしまったんです 笑

赤木:そうなんですか!?今のコミュニティ運営をしている姿からはイメージできないですが。。

渡辺さん:100人くらいの規模で、歴史のあるサークルだったんですが、組織の一部として動くのが苦手で、自分で色々決めたいタイプだったんです。『伝統だから』とハッキリした理由の無いルールに従うのも当時は苦手でしたね。

赤木:確かに、世間的にはテニスサークルってユルいイメージがありますけど、歴史あるサークルだとそういう空気ってありますね。

渡辺さん:それでもテニスは好きだったんで、コートを借りて友達と闇錬(やみれん 正式なサークル活動ではないテニスの練習会)をしたりしていました。

新人時代

渡辺さん:卒業して東京で就職したんですが、夏休みに半年ぶりに同期とテニスをやったらやっぱり楽しくて、会社のテニス部に入って部活動とか合宿とか積極的に関わるようになりました。

赤木:その時は大学のサークルの時みたいな空気は無かったんですか?

渡辺さん:そうですね。実は学生サークルよりも社会人サークルの方がフラットで、レベルも様々で変なルールとかも無かったんです。

でも就職して1年半で大阪転勤になってしまって、一旦リセットされました。

大阪での活動

赤木:大阪でもテニスを続けられたんですか?

渡辺さん:そうですね。会社のテニス部が大阪にもあって、テニス経験者という事もあって当時の部長に誘われてやっていました。その後部長が異動になったのがきっかけで私が部長をする事になりました。

周りの人は私より5歳くらい上だったんですが、そこでも可愛がってもらえて上手くいっていましたね。そのうちもっと人を増やしたいと思うようになっていました。

転機はmixiの台頭

渡辺さん:2005年にSNSサービスのmixiが出てきた頃でした。その後爆発的に流行りだして、色んなテニスコミュニティができました。私は流行りだした頃すぐmixiを使って外部の人を集め始めました。

そこで集まった人と社内の人、その友達のメンバー部活を乗っ取る形で(笑)スピンアウトして、練習会や合宿をするようになりました。

赤木:確かに、人が集まるとどうしても温度感が出ますよね。それで熱意ある人だけで別のサークルを作るケースも結構ありますし。人数はどれくらいだったんですか?

渡辺さん:1年半(+1年)の活動で最終的には80人を超えました。コートを2面借りて16人くらいで練習するイメージですね。

大学サークル時代の反省点を活かしつつ、「ツーバウンドするまであきらめるな」をテーマにした、男女とレベルの垣根のないテニスサークルでした。

でもここでまた異動になって、今度の異動先は名古屋だったんです。

名古屋転勤

赤木:サークルが形になったタイミングで異動になるんですね 笑

渡辺さん:それで今度は名古屋で1つのテニスサークルの立ち上げに関わり、自分でもサークルを立ち上げて他のサークルと交流したりと積極的に動いていました。

でも実はこの頃大阪の自分のテニスサークルにも行ってたんです。

赤木:え!?名古屋から大阪までですか?

渡辺さん:はい。「がくちゃん、大阪まで通ってよ」と言われて)、週末は名古屋から近鉄特急で大阪に行っていました。だから平日は名古屋で週2,3はテニスして、土曜に名古屋でテニスサークルを運営してから夜に大阪に行く。日曜は大阪のテニスサークルを運営して、アフターを楽しんでから終電で名古屋に帰るという生活を送っていました(笑)丸一年(笑)

赤木:テニスを中心にした生活って感じですね。

渡辺さん:そうなんです、仕事もテニスをやる為にやっていたような感じで、それ自体にやりがいみたいなものを感じてはいなかったんですね。それである時『このままテニス中心の生活で良いのかな?』と疑問を持つようになって、その時東京にいた先輩に誘われて今の会社に転職しました。ちなみに名阪のテニスサークルの活動で、2年半で6組が結婚しました。今のところ誰も離婚していません(笑)

赤木:今の会社はどういうところなんですか?

渡辺さん:私の部署では教育関連のITシステムと受託運用サービスを提供しています。教育に関しては以前から関心のある分野でしたし、前職もIT系の会社でしたので。

再び東京へ

インタビュー

赤木:東京でもテニスを続けていたんですか?

渡辺さん:東京では自分で立ち上げはしていなかったんですが、10年くらい特定のテニスサークルに参加していました。テニス協会に加入するところからつなぐところ、対抗戦の企画、草トーナメントへの参加企画とかをやっていたんですが、10年もいると実質的な裏番長みたいになってたと思います(笑)

ちなみに妻と結婚した後に、このサークルと出会いました。妻との出会いは大阪のテニスサークルだったんですが、私が東京に来た後すぐにこっちに来てくれて、その後結婚する事になりました。

パデルとの出会い

赤木:パデルとはどういうきっかけで出会ったんですか?

渡辺さん:2015年に、現日本パデル協会副会長の玉井さんがパデルで起業した後、クラウドファンディングでパデルコートを作ると言う話を聞いたのがきっかけです。

玉井さんとは元々テニスで繋がってたんですが、突然「パデルが熱い!」って言いだして。

最初はテニスから離れるつもりはなくて冷ややかに見てたんですけど(笑)、熱意に負けてパトロンになりました。

それでクラウドファンディング達成してパデル体験ができるイベントに参加したんですけど、実際にやってみたら凄く楽しかったんです。

それから私もテニス仲間に声かけて、一緒にパデルをやるようになりました。

パデル&BBQイベント

赤木:渡辺さんさんはパデルとBBQを併せたイベントをされていますが、それはいつから始められたんですか?

渡辺さん:パデルを始めたのが2016年で、パデルを始めてまもなくして日本パデル協会会長の中塚さんが行なっている、南米風のBBQ「アサード」とパデルを組み合わせたイベントに参加させてもらったんです。見た目がすごくて美味しくて楽しくて、この集まりに衝撃を受けました。

私がBBQを併せたイベントを始めたのはその1年後の2017年6月でした。

当時は川口でやっていたんですが、今は所沢でやっています。

BBQのクオリティも回を重ねるごとに上がってて、1年前には自分で機材買って練習したりしていました 笑

赤木:自分で機材買うって凄いですね 笑

渡辺さん:『バーベキューインストラクター検定』って言う検定試験を受けたり、今でも新しいメニューを試したりと試行錯誤しながらやっています。

※現在は中級バーベキューインストラクター

インタビュー

▲ガクパデBBQの名物『丸鶏のビア缶チキン』。

パデル+BBQの良さ

渡辺さん:ガクパデのコンセプトは『家族・恋人・友達・単品・老若男女国籍問わず初心者から日本代表までカモン!』です。

初心者でも大歓迎ですし、赤ちゃんを連れて来たりもできます。ちなみにガクパデの最年少参加記録は「0歳2ヶ月」です(笑)

赤木:パデルはコートが壁に囲まれてるから、外に飛び出たボールが赤ちゃんに当たったりしないんで安心ですしね。

渡辺さん:そこが結構大きなポイントで、子供ができてスポーツができなくなってしまった人でもガクパデなら楽しめるんです。周りに大人が沢山いるから、親御さんが試合してても常に誰かは見てくれてますし。

赤木:私も参加した事があるので分かりますが、皆がガクパデを成立させてるような空気感が有りますよね。まさに『コミュニティ』って雰囲気が凄く良いです。

渡辺さん:パデル日本代表選手がコーチしてくれたり、還暦を過ぎた方が奥さんと娘さんやお孫さんと来たり、色んな人が集まってワイワイしていますね。初心者専用コートを確保してレッスンをしたり、打てる人達は別のコートでひたすら試合やったり、最後はみんなで混ざって試合をしたり、皆がそれぞれの楽しみ方で満足してもらえるように設計しています。

『サークル』ではなく『コミュニティ』を創る

渡辺さん:私はガクパデは『サークル』ではなく『コミュニティ』だと考えています。

赤木:サークルではなくコミュニティですか?

渡辺さん:サークルって言うと、『柵』みたいなイメージがあって、ちょっと入り込みにくい感じが出てしまうんですよね。

『コミュニティ』って表現の方が、誰でも参加OKってイメージになりやすいと思ってます。

赤木:その感覚分かります。身内感が出過ぎると言うか、どうしても新しい人が参加しにくい感じが出てしまうんですよね。

渡辺さん:ガクパデに参加した人が言ってくれている名言があって、『上手い人はいるけど恐い人はいない』って言葉です。これもコミュニティとしてうまく機能しているからだと思いますね。

また、今年からスペインのトップパデルブランド『スターバイ』の世界初のアンバサダーとなり、活動の幅が広がりました。個人的には色々な人達や企業とコラボして活動していきたいと思います。

パデル

▲ガクパデの集合写真。子供から大人まで皆で楽しんでいる事が分かります。

セミナー活動、これからの展望

赤木:渡辺さんは最近セミナーも開催しているんですよね?セミナーではどんな事を話してるんですか?

渡辺さん:『ガクパデセミナー』と言って、お話したようなガクパデのコンセプトについて話をしています。目的はガクパデの応援者を募る事です。

赤木:応援者というのは参加者とは別という事ですか?

渡辺さん:はい。ガクパデを含めて私の活動を応援してくれる人を募っています。これは私の夢なんですが、将来は自分でパデルコートを持って運営したいと思っているんです。

今はガクパデと言うコンテンツを提供していますが、パデルコートというハードウェアがあればそれをもっと広める事ができます。例えばセミナーでガクパデのノウハウを伝えれば、コートが増える分だけガクパデのコンテンツも広める事ができます。

他にも、例えばスペインにパデル留学したいという若者を応援したり、コミュニティが大きくなればできる事の幅が広がりますから、そういった事をやっていきたいと思っています。

▲セミナー参加者との1枚

コミュニティの役割

渡辺さん:コミュニティには色んな良い部分があると思うんですが、その一つが『教育』だと思います。ガクパデでは小学生が受付をしてお金のやり取りをしたり、子供がBBQの野菜を切ったり、焼ける前のおもてなしの一品を作ってもらったり、他の子どもと協働して作業をしてもらったりしています。そうする事で、年齢を越えた関わりや社会性を楽しみながら学ぶ事ができます。

赤木:子供にとって、親や先生以外の人との関わりって凄く良い勉強になりますよね。

渡辺さん:2020年度から大学入試改革が始まります。教育の在り方が今までと根本的に変わっていきます。

人口減が大きな要因だと思いますが、昔のように知識を詰め込んで会社に入って終身雇用で老後を迎えるという時代ではなくなります。そうなった時に、コミュニティから学ぶ事がとても重要になるんです。それは人との関わり方だけじゃなく、答えの無い問いに対して自分で答えを作っていくような体験も有りますね。

赤木:親御さんは子供を見ながらパデルをして、子供は遊びながら学べる空間って良いですね。

渡辺さん:後は、『自分の居場所』ができると言う事も大きいですね。

例えばサラリーマンだと現役で働いている間は会社があるから良いんですが、定年で仕事が無くなると趣味が元々なかった方は途端に暇になってしまいます。でも外のコミュニティに溶け込めない年配の人って結構多いんです。人生100年時代を考えた時、これは大きな問題になる。そういった方々もガクパデで救いたいと思っています。自分がいてもいいんだ、と思える場所を創りたい。

赤木:まさに家族・恋人・友達・単品・老若男女国籍問わず一緒にいられる居場所ですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

パデルとBBQを組み合わせてコミュニティを作っていくと言う考え方、コミュニティの在り方については私達とスポーツとの関わり方の中でもとても重要になると思います。

スポタスでは『スポーツ+何か』を持ったスポタス人をこれからもご紹介していきます。

この記事の記者紹介
スポタス編集部

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早川:いえ、私が入学した当時はスポーツ心理学専攻ではなく、理学部の情報物理学科でした。 赤木:むしろ心理とは離れた印象ですね。 早川:きっかけは、当時のスポーツ心理学の実践している先生で第一人者の人がいて、その方の主催するメンタルトレーニング勉強会にいったことです。目から鱗が落ちるような内容で、そこからもっとスポーツ心理学について勉強したいと考えるようになりました。 赤木:大学にいるとたまにびっくりするような面白い授業に出会える時ってありますよね。 早川:その先生がメンタルトレーニングのスタッフ募集していて、学部は違うけどやりたいと思って先生の研究室に入り浸り、勉強会に参加して4年間を過ごしました。 赤木:熱量が凄いですね。 早川:学部生が終わって修士になった時、その先生の研究室に入る為に体育学科に入ります。そしてそこで2年間本格的にスポーツ心理学の勉強を始めました。 アメリカ留学 赤木:今はアメリカの大学にいらっしゃいますが、元々アメリカの大学に行こうと考えていたんですか? 早川:英語には元々興味がありました。中学の時にも英会話教室に3年間通っていましたし、漠然と、英語をもっと使いたいとは思っていました。留学の大きな理由としては、大学院1年生の時に進路を考えてて、当時通ってた大学に博士課程がなかったので外に出る必要がありました。それで先生や研究室の先輩に進路相談した時、留学を勧められたのがきっかけです。 赤木:それでアメリカ留学だったんですね。かなり勇気が必要だったんじゃないですか? 早川:学生でスポーツ心理学を学びに留学してた人はいなかったので、腹くくっていきましたね。それでまずはフロリダに行って、その後今いるテネシーに行きました。 スポーツ心理学がマーケットとして成熟していない状況ですので、自分が先陣きって後輩の目指す道をつくっていきたいという想いでしたね。 赤木:テネシー大学を選んだ特別な理由は何かあったんですか? 早川:国際応用スポーツ心理学会が年に1度あるんですが、そこで留学の情報を集めていたところ、テネシー大学の運動学博士課程を見つけました。そのプログラムが東海大学のプログラムに似ていて、研究よりも現場の選手に直接アプローチする形でした。そこに魅力を感じてテネシー大学を選びました。 その後、英語学校に2年間通い、修士としてスポーツ心理学、運動学士を2年経験して、博士課程では教育心理学や色んな学習理論、指導理論を4年間学びました。その間、不定期でアスリートのメンタルサポートも行っていきました。 ▲ポートランドで開催された国際応用スポーツ心理学会にて自身の研究をポスター発表。 アメリカのスポーツ心理学 赤木:アスリートのメンタルサポートはどういった事をされていましたか? 早川:剣道のユース選抜チーム向けに練習会の様子を見てアドバイスをしたり、セミナーやワークショップを開催したりしていました。日本でも一時帰国のタイミングでセミナーに登壇したりもしていましたね。 スポーツ心理学に関する世界の関心 赤木:アメリカなどではスポーツ心理学がかなり盛んだと聞いていますが、やはりそういった点は体感されますか? 早川:そうですね。まずスポーツのスケール感が全く違っていますね。それは建物や施設、マーケットについても言えます。そしてスポーツに対する裾野の形が違っています。 赤木:裾野ですか? 早川:アメリカでは誰でも気軽にスポーツができる環境があるんですが、本格的にやりたいと思ったら学校ではなく地域のクラブチームに入ることになります。日本のように放課後に部活動があったり、学校単位でどこかに遠征するというものはないです。 赤木:学校以外の場所にもスポーツができる場所が沢山あるんですね。 早川:例えばテニスコートやゴルフ場は凄く安いですし、色んな所にジムがあったり、バスケコートも多くあります。メジャースポーツについてはどの競技も気軽にできますね。 赤木:日本だとメジャースポーツは特に競技する場所に困ったりしますが、そういった困り事が無いのは羨ましいですね。 早川:プロスポーツに対する投資もアメリカは大きいですね。特にトップにいけばいくほど投資金額は大きくなっていきます。それはスポーツサイエンスに対しても同じで、トップにいくほど科学的な分野への投資がなされますね。 赤木:やはりトップチームではメンタル面のサポートも手厚いですか? 早川:そうですね。どのチームも専属のメンタルコンサルタントがつくようになります。例えば野球ならマイナーリーグでも全球団にメンタルコーチがいますし、スポーツ心理について理解はありますね。とはいえそれもトップレベルに限られていて、草野球のレベルで言うと日本と大差はないと思います。 赤木:アメリカでもまだメジャーな分野という訳ではないんですね。 早川:アメリカは規模が大きい分、スポーツ心理学を学べる大学は多いですが、まだまだスポーツ界の中ではマイナーな分野ではありますね。やはりフィジカルや生理学アスレチックトレーニングなどがメインになっていて、スポーツ心理学は修士課程や博士課程として取り組む人が多いです。その人達が現場に入っていく形でスポーツ心理学の認知が広がっているのが現状です。 成長の楽しさを味わってもらいたい 早川:スポーツ心理学のテーマとして、成長する楽しさを味わうということがあります。例えば競技中のプレッシャーを無くしたり、競技力を最大にするといったことで、特に私が興味を持っているのは後者の方です。 赤木:競技者が自分の持っているパフォーマンスを最大に発揮する点ですね。 早川:スポーツにおける様々な場面を目にしていて感じる事なのですが、指導者と選手の関係に行き違いがあると思っています。効果的なスポーツサイエンスのナレッジがない為に成長できていないという場面をよく見かけてきました。それは選手に限らず、指導者ももっとスポーツサイエンスを取り入れると成長する事ができるのにと感じる事も多いです。 赤木:確かに、指導者も過去の経験の範囲からしか指導ができないというのはありそうですね。 早川:今後はそういった部分にもアプローチしていきたいと思っています。以前、中学校の地域バスケチームに関わっていたんですが、その子たちのメンタルサポートをすると周りの指導者が驚くらいに成長した姿を目にしました。その時の喜びが忘れられなくて、選手たちが劇的に成長したり周りをあっと言わせたりする瞬間をつくりたいと思うようになりました。 日本のスポーツ教育 赤木:日本ではどうしてもスポーツやメンタルというと、根性を鍛えるといったニュアンスが連想されてしまいますね。 早川:日本の場合は、まず選手と指導者の関係を見直す必要があると思います。元々、日本のスポーツは体育が起源と言われています。体を育む為のカリキュラムですね。それがスポーツという面も持つようになってきたのが今の状況だと思います。 赤木:体育とスポーツでは必要な指導の在り方も変わってきそうですね。 早川:そうですね。体育では指導者と選手はそのまま上下関係になっています。それは年上を敬う考え方からもきています。ですが、近年では社会が変わって、文化が変わってきました。その為うまくいかなくなってきたことも多く出てきています。例えばパワハラ、体罰問題もそうですね。 赤木:元々そういった事はあったけど、選手の意識が変わったから表に出るようになったというのはありそうですね。 早川:そういった点で、指導者の意識を変えていく事が必要だと思います。これは何もパワハラや体罰に限らない話で、指導者側が良かれと思ってやっている事でも、選手サイドの声が加味されてないため選手の納得を得られない事などもあります。 赤木:正解と納得解みたいな話ですね。 早川:その判断にあるリスクを理解した上で、選手にも責任を持たせることが大事だと思います。やらされていない分、選手達も納得しますし。それがもし間違っていても、間違いから学ぶ機会を得たと考える事もできます。全て指導者が環境整備してしまうと、そういった間違いから学ぶ機会が無くなってしまいますので。 赤木:常に正解を選び続けるというのは難しいですからね。社会に出てからは特に。 早川:まずは指導者と選手の関係作りです。指導者は選手の声を聞き、選手の責任を認めてあげる。選手は自分で判断する事を与えてもらった代わりに責任を取る。そうやって、お互いを尊重し合う関係性を作っていく事ですね。そういった部分で、スポーツ心理学が役に立ちます。指導者と選手のコミュニケーションだったり、練習環境・指導環境のアイディアなどはスポーツ心理学が担える部分でもあります。 赤木:指導者と選手が一緒につくっていくのが大事なんですね。 早川:そうですね。ともに学びあって良い練習環境をつくる事が大切で、スポーツ心理学や教育心理学はそういった場を作るのに役立ちます。 学生と指導者にとってより良い関係を 赤木:今後の目標やビジョンについてお聞きしていいですか? 早川:学校内外での選手やコーチのサポートは引き続きやっていきたいですが、今後は大学に勤めて、学生選手に関わっていきたいと思っています。例えば授業や研究室で学生を育てて、スポーツ心理学を広めていきたいです。 他にはセミナーや勉強会を開いたりして、スポーツ心理学や教育心理学を広めていきたいですね。スポーツ心理学、教育心理学の価値をレガシーとして残していきたいと思っています。 赤木:学問をレガシーにして残すというのは面白い発想ですね。 早川:目指すのはスポーツ心理学のようなサイエンスの領域と経験を合わせる事で新しい価値を生むことです。私は経験論を否定しているわけではなく、サイエンスとの組み合わせで価値が出るものだと思っています。 赤木:確かに、机上論だけで進めようとするのは難しそうですね。 早川:例えば指導者が職人のように経験を積むことも大事だと思っていますが、経験だけに頼って指導すると選手によって成長したりしなかったりしてしまいます。サイエンスはより多くの人に当てはまる法則ですので、そこを補完する事ができます。 とはいえ、それはあくまでセオリーであって、例外的な特徴を持つ選手も出てきます。そういった選手については経験で補完していく。両方の良い部分を融合していく事で、より良い選手育成ができるようになります。 赤木:なるほど、お互いの不完全な部分を補完する形ですね。 早川:近年はサイエンスが軽視される風潮にありますので、それを同等に価値あるものとして捉えて頂き、多くの人達に活用していってもらいたいと思います。   文:赤木 勇太
2020/03/29 80PV

  • インタビュー

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